げんき便り 2015年6月号「女性小児科医の課題」

つい最近長女の結婚式を行ったばかりですが、びっくりさせられるニュースが飛び込んできました。籍はすでに1か月以上前に入れていたので、できちゃった婚ではないのですが、つい最近体調が悪いので一応妊娠検査をしてみたところ陽性反応が出たとの事。

両家を挙げて早速お祝いをしました。

ただ、まだ数週しか経っていないので、不安定で流産の危険もあり、安心できません。

娘は今小児科の医師になって3年しか経っていませんが、日本では医師不足が深刻です。とりわけ産科と小児科がひどい事になっています。夜間にお産が多い事や小児の夜間救急の受診者が多い事。しかも一旦医療事故まがいの事が起こればすぐに訴訟に持ち込まれる風潮にあります。

数年前から国の医療改革で研修制度が大きく変わり、いきなり自分の希望する専門科の医局に入局せずに、まず2年間かけて様々な専門科を数か月ずつローテーションしてから専門とする科を選び入局することになりました。

しかも必ずしも大学の医局に入らなくてもよくなったのです。よかった点としては、多少短期間でも麻酔科、救急科、内科、外科、小児科等々幅広く体験できるということですが、所詮1,2か月で何が分かるでしょうか。

逆に困ってしまう点は所属の科にとってその忙しさ、大変さがかなり違う現実が分かってしまい100人中10人以上はいたはずの産科や小児科希望の医学生が皆無になってしまうことです。

私の頃は小児科の医局には常に10人以上の新人が入局していました。娘に聞いたところ今年の入局予定者はゼロ人で、いまだに自分が一番下っ端だそうです。

こうなると大学からの主要な中堅都市の総合病院への医師の派遣がままならず小児科の縮小・閉鎖が全国で相次ぐようになりました。

大学での当直業務も人手不足で大変になり、娘も結婚式前の打合せの為の休みもなかなか取らせて貰えず、ぎりぎり間に合った状態で、ハラハラしました。当直も毎週土曜か日曜を任され、一晩に5,6人も入院患者さんがいて一睡もする間もなくそのまま翌日の通常勤務に入っていたとの事。

日本では現在医学部における女性の割合はかなり増えて40%を超えている状況です。(昔は2~3%程度でした)

昔は私も女医さんの出産にまつわる仕事のしわ寄せにはかなり被害を受けて「参ったな」と思っていましたが、今は数においてはその比ではなく、ましてや自分の娘が他のドクターに迷惑をかけまいと無理しすぎて何かあったらどうしようとまさに板挟みの心境です。

女性が安心して出産、子育てし、社会で働き続けられるような社会はまだほど遠いように思われます。

当院の病児保育所が少しでも若い夫婦の為になればと思います。

院長