NO.135

平成15年11月1日発行

先日、久しぶりに本屋さんに足を運んだところ、最近よく売れている本のコーナーで、「不良少年の夢」という本が目に入りました。

その実話をもとに10月10日から毎週金曜夜に「ヤンキー母校に帰る」というドラマも始まっています。

その著者が学生として通い、しかも今教師として勤務している学校が、北海道の余市高校ということでびっくりして迷わず買い、その日のうちに涙ぼろぼろ流しながら読み切ってしまいました。

実は15年程前に、不登校で小学校3年から6年以上にわたって私が関わってきた患者さんが、意を決して本州から北海道の余市高校に編入したものの、再び下宿から一歩も外に出られなくなり私に助けを求めてきたので、4回ほど北海道まで会いに行ったことがあったからです。

その時初めて訪れた余市高校の印象はとても衝撃的なものでした。

学級崩壊という言葉が聞かれ始め、知人の教師からもいろいろ聞いていて頭では理解していたのですが、実際に目にすると学校全体が絶望的な程荒れていて、生徒達の服装や風体はとても高校生とは思えるようなものではありませんでした。

それでも一部の先生方は投げ出すこともなく、毎日夜中まで生徒の下宿や寮で問題のある生徒と向き合い話し合い、それが終わると中心的な先生の部屋に集まり、報告し合ったりしていました。

私もその中に加わり、自分の患者の子のことはもちろん不登校に関する講義をしたり、非行の子の心理について議論したりしたものです。

生活の全てを生徒達のことに全力を傾けている先生方の姿にはとても感銘を覚え、自分も一時小児科医を辞めてこの学校でこの先生達と一緒に働けないものだろうかと考えもしました。

もうあと数年早く出会っていれば、いろいろなしがらみもなく迷わず自分も飛び込んでいたと思います。

このような本物の先生方がいる限り、きっとこの学校は今のような状況からすばらしい変貌を遂げていくに違いないと確信したものでした。

幸い私の患者さんはどうにか持ち直し、音楽大学に進学、卒業を果たせました。

著者の義家弘介青年が本にして書かれた彼のそれまでの体験、心情に共感しつつ、毎年新たに入学してくる不登校や非行歴のある少年達に愚直なまでにぶつかって行く今の彼とその仲間の教師集団にエールを送りたいと思っています。

教育に携わる日本の心ある先生達!ぜひ彼のように情熱を失わず一人一人の生徒達に対して接していってほしいと願っております。