No.144 児童虐待について

1999年に制定された児童虐待防止法によると児童虐待は以下の4つ分類される。

(1)児童の身体に外傷が生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること
(2)児童にわいせつな行為をすること又は児童を通してわいせつな行為をさせること
(3)児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監視を著しく怠ること
(4)児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

■虐待の発見・通報
まず発見されるきっかけとなるのは保育園や学校の保育士や教師や近隣の住民達からの通報からである。

また、栄養失調・脱水・骨折・意識障害などで児童が病院(小児科・外科・脳外科)にかかってきた際に医師が発見する場合もある。

通報先としては児童相談所・警察・市役所の児童福祉課・保健センター・子育て支援センターなどがある。

■被虐待児の保護施設
虐待されたと思われる児童が病院にかかってきた場合は、入院治療及び親からの隔離・保護をする。入院中、面会や外泊を通じて親子関係の再構築を図るが、うまくいかず再発の恐れがあれば、児童養護施設へ入所させて保護する。

2歳未満の幼児は乳児院に入所させる。乳児院とは児童福祉法第87条に定める施設で、保育士が乳児たちの世話をしている。

満3歳になると児童養護施設へ措置変更をしなければならない。親との分離体験をしている乳児にまた分離体験を強いることは適当ではない、一定の年齢まで同じ敷地内の建物で一貫して養育する必要がある、という声も多々聞こえる。

児童養護施設では3歳児から高校3年生までの子どもたちが、担当する寮母さん達と共に集団で生活している。年齢により上下関係があるため、いじめが起きたりすることも多いようである。

中学を卒業または自ら希望して高校まで通い卒業する年齢ともなると、施設から出て一人暮らしをしなければならない。

長期に施設で過ごした子ども達は社会経験が希薄であることが問題になっている。また、高校卒業後進学を希望する場合は、自分で授業料を払わなくてはならないので、生活が非常に苦しくなり、結局泣く泣く諦める者もいる。

■虐待の原因
20~30年ほど前は、虐待は社会的貧困によって引き起こされるとの考えが主流であった。しかし、日本をはじめ先進資本主義国が物質的・経済的に豊かになってきたにもかかわらず、虐待は増えるばかりである。

このことは経済的要因だけではなく、他に主な原因があるものと思われる。

例えば大家族の崩壊、核家族化による孤立感によって引き起こされる人間疎外、ストレスによる育児ノイローゼ・ひきこもり・うつ病・家庭内暴力。さらに祖父母や地域の身近に頼れる相談者がいないことも挙げられる。(村社会の崩壊)

■今後の課題
被虐待児は、ときに爆発的な怒りを見せることがある。

養護施設という一応寮母達を中心とした大家族的場から放り出され、改めて親から見捨てられ、愛情放棄されたことの再認識、施設退所後の孤独、寂しさ、どこに向けていいのかわからない怒り…。自暴自棄の感情や自己破滅の行動にわざと走り、職を転々としているうちに悪い仲間と知り合いになり、非行や犯罪に走る者が少なくない。

そのような方向に行かさないためにも、家族と一緒に暮らせない子どもにとって、親に代わって心から信頼できる人がいるかどうかが非常に重要な問題になってくる。

高校を卒業してからもケアが必要な子ども、そして物心両面のサポートが必要な子どもはいくらでもいる。

そうした子どもたちのために自立援助ホームというものがある。自立生活援助事業として公認されていて、入所してくるのは15~20歳ぐらいまでの男女である。

自立援助ホームは養護施設を退所するにあたり、いきなり厳しい社会の現実的生活に適応できそうもない少年達や一度社会に出て失敗した少年たちのための自立訓練所で、2年間だけ入所できるが、その後は再び厳しい社会に放り出されてしまうこととなり、限界がある。

やはり一生を通して責任を持ってかれらの行く先をずっと見守り続けてあげられるような人の配置、システムの構築が期待されると思う。