NO.173 病院のチカラ

医療をめぐり医師と患者の関係がギクシャクしている感じのする昨今ですが、それもこれもマスコミによる医療に関する記事の扱いが医療不信を助長しているためのようにも思えます。
ある有名な医療相談グループには、医療過誤や医療不信の記事が新聞やテレビで流されると通常の2~3倍以上の電話相談がかかるそうです。
最近急に騒がれ始めた医師不足の一因も、医師がきつい労働条件の医療現場でも頑張れるためのやり甲斐が薄れてきて、感謝されるよりむしろ責められる風潮が強まっていることと関係があるかもしれません。
私も研修医時代は無給で朝早くから夜中まで寝る間もなく働きずくめで大変でしたが、早く一人前になりたい、患者さんの役に立てるようになりたいと思って頑張ってきました。医師となる者は皆そのような本能があると思います。
やがて開業すると勤務医とは違ったプレッシャーと忙しさに巻き込まれ、あっという間に月日が経ち、歳をとり、時には嫌な経験もし、次第に守りに入り無難に淡々と日々が送れればという気持ちが強くなってくるように思います。
そんな中、菊川怜主演のNHKのドラマ「病院のチカラ(星空ホスピタル)」を見ました。脇役も津川雅彦、筧利夫、鹿賀丈史と豪華な配役です。
初めはわざとらしい稚拙な設定に対しあら探ししていたのですが、患者と医師の真摯な心と心の交流、言葉のやり取り、お互いの成長にいつしか引き込まれ、なぜか懐かしい暖かな感情にとらわれ、心打たれました。
医者も患者もこのような関係を昔も今も変わることなく心から求めているのだとあらためて思い、医者になりたての頃の原点に帰ろうと思いました。
この思いを今後の外来診療での心構えや態度、診療体制に表していきたいと思います。たかがドラマ、されどドラマ。人に与える影響力、すごいですね。