No.179 亀田家の子育てと私たち

ボクシング世界タイトルマッチ亀田・内藤戦がかなり話題になっていましたが、確かに反則だらけの内容で、私もテレビを見ていてもあきれかえるだけでなく憤りを覚えました。
結果はチャンピオン内藤氏の勝ちに終わり、よかったと思います。
コツコツと地道に努力を重ねてきた人間が勝ち、その努力が報われて、「世の中こうでなくちゃいけない」と心の中で思わず叫びました。
スポーツとしてのボクシングの基本・原点から大きく外れ、「ともかくどんなことをしてでも勝てばよい」「勝ちさえすれば世の中の人たちは自分達に対する態度が変わる」という亀田家の父親の考えには不快感を覚えます。
純粋無垢であったであろう幼い頃より、そんな身勝手な父親の考えを押し付けられ、感化されて育って今のような姿になってしまった亀田兄弟達のことを考えると、「教育・しつけ」が誤って行われた場合の恐ろしさがよく分かります。
小児科に携わって30年になりますが、外来でのちょっとした言動を見るだけでも、その子がスクスクと素直に育っているか、わがまま放題・傍若無人に育てられてしまっているかはある程度分かるものです。
「このままではこの子はどんな大人になってしまうか心配だ」と思っていた子が、不幸にも予想が的中してしまい、ゲーム中毒、ひきこもり、家庭内暴力、非行といった状態になってしまい、親の手に負えなくなるケースも多々あります。
小児科医としておせっかいと思われてもいいから、もっと育児に介入し親たちに注意し、苦言を呈していれば良かったのかもしれないと、後悔することも多々あります。
子供は小さいときは母親の無条件ともいえる庇護・愛情をたっぷりと受ける事が情緒安定のためにも大切だと思っています。
思春期にさしかかると厳しい父親より、広く世間を見渡した上での社会規範や生きる姿勢を指し示してもらう事が大切だと思います。
そして更には父親・母親の影響力からやがて離れ、もっと違ったもっと大きな人物に出会い、目標としたり影響を受けていくことが必要なのではないかと、自分の経験上からも強く感じます。
亀田兄弟も父親の支配・影響下から早く抜け出して親離れをはかり、立派な指導者に出会い再起をはかっていければ良いのでは・・・と思います。
またある程度こちらで自分に見切りをつけて、子離れのために突き放すのも親の深い愛情ではないかと、亀田兄弟の父親には言いたいです。
子を持つ親達は、今回の騒動で亀田一家を非難するだけでなく、自らの子育てのあり方を見つめなおす良い機会と考えるべきではないでしょうか?