NO.71

平成10年2月1日発行

今、ピカチューをはじめとする怪獣ポケットモンスターが子供達に大人気ですね。
そんな矢先にポケモンのテレビ番組を見ていて、何百人もの子供達がてんかん発作らしき症状を起こし、救急車で病院に運ばれるという事件が起きてしまいました。
これはどうも以前起きたことのあるテレビゲームてんかんと同じメカニズムで起こったようです。
しかも救急車で病院を受診しなかったものの、吐き気や頭痛など何らかの異常を訴えた子供の数はその後の調査で、何百倍にものぼったようです。

これに対して既にイギリスでは、テレビ放送をするにあたって、一定の基準以上の光の点滅刺激を禁止していました。
日本でもその前例・教訓に学んで素早い規制の動きをするかと思っていたところ、素早かったのはそのテレビ番組を放送禁止にするだけで、あとは専門家の委員会による研究・報告待ちといったところのようです。

今の日本の状況を見ると、政治・経済分野でも何をやるにも建て前やメンツ・形式にとらわれるばかりで、時期を失いすべて後手後手に回っている気がしてなりません。
それからポケモンといえば、150以上もの怪獣の名前を小学生ばかりでなく幼稚園の幼児までもが、お経の文句のようにして全部そらんじて言えるというのには驚きです。

試しに私も「ピカチュー・カイリュウ・ヤドラン・ピジョン」と少し挑戦してみましたがなかなか大変でした。改めて子供達の頭の柔らかさに脱帽です。
そしてどの親もきっと、この驚くべき暗記力を掛け算の九九をはじめとした学校の勉強になぜ生かせないのだろうと首をひねったことでしょう。

でもよく考えてみると、興味さえ覚えれば子供達はいとも簡単に丸暗記できる能力を、すでに幼稚園の年少さんぐらいでも持っているということのようです。
だからといって、たくさんのことが丸暗記できるその子の頭脳がすばらしい、頭が良いとは誰も本気で思わないはずです。

本当はじっくりと何時間も何日間も、模範解答というものがない難問を自分一人で考え続ける、粘りと集中力そして独創性が大切なのだと思います。
社会に出れば更に決断力、判断力、実行力そして柔軟性が多く要求されるようになることでしょう。
今の日本の学校教育ではそういった面を伸ばすノウハウやプログラムは用意されることなく、安易な暗記中心の詰め込み教育が幅を利かせているように思えてなりません。

ただ私は、それらをそらんじて聞かせてくれる子供達の得意そうで自信に満ちた明るい顔を見るのは好きです。この笑顔が、学年が上がるにつれて曇っていかないようにと祈るばかりです。