NO.79

平成10年10月1日発行

先日美智子皇后がインドのニューデリーのある児童書に関する世界大会で、ビデオではあるけれど英語で「こども時代の読書の思い出」という基調講演をしたそうです。

「こどもの本を通しての平和」というテーマだっただけに核実験したばかりの国へでかけて行くわけにはいかなかったようです。

新聞で講演の要約を読んで興味を覚え、インターネットで全訳を手に入れて読みましたが、さすがは美智子さまという感じでした。
素直で人ずれしてない性格そのままのやわらかでやさしい言葉づかいながらも、奥深いその内容にずっしりと胸を打つものがありました。

背中の殻いっぱいに悲しみを背負い、もう生きていけそうになくなったデンデンムシが、実は悲しみは誰もが背負っていることに気づいてもうなげくのをやめた童話は、美智子さまのある時期の心情を想像させるだけでなく、生きている限り避けることの出来ない多くの悲しみに対し、ある時期からこどもに備えさせておかなけえればいけないことを教えてくれています。

また、少女時代に倭建御子(やまとたけるのみこ)と弟橘比売命(おとたちばなひめのみこ)との悲恋から、「愛の中に存在する自己犠牲」になぜかひきつけられ畏怖の念を抱き、その後みずから皇太子の妃として嫁いでいった運命の不思議。

読書を通じて人は様々な事を学び追体験することができるわけですが、とりわけ子供時代に読む書物はその人間の生き方や運命に大きな影響を与えるものであることが実感させられます。

最後に美智子さまは次のような言葉で講演を閉じました。
「どうかこれからも、これまでと同じく、本がこどもの大切な友となり、助けとなることを信じ、こども達と本を結ぶ大切な仕事をお続け下さい。
こども達が、自分の中にしっかりとした「根」を持つ為に。
こども達が、喜びと想像の強い「翼」を持つ為に。
こども達が、痛みを伴う愛を知る為に。
そして、こども達が人生の複雑さに耐え、それぞれに与えられた人生を受け入れて生き、やがて一人一人、私ども全てのふるさとであるこの地球で、平和の道具となっていくために。」

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読書の秋をお子さんと一緒にいかがですか?