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NO.90

平成11年10月1日発行

つい先日石原慎太郎・東京都知事が重い障害のある人たちの治療にあたっている病院を視察しましたが、その時記者たちにはなした感想の談話が問題になっています。

『・・・ああいう人ってのは人格あるのかね。つまり意思持ってないんだからね。・・・もう絶対よくならない、自分が誰か分からない、生まれてきたか生きたかも分からない。ただ人間として生まれてきたけれども、ああいう障害で、しかもああいう状況になって、かけてるお金も大変なものだけど、・・・ああいう問題って安楽死なんかにつながるんじゃあないかなって気がするんだけど・・・』

石原氏は「歯に衣を着せぬ発言」で人気を呼び、大胆な改革をしてくれそうという期待を受けて当選したと思うのですが、歯に衣を着せぬ発言が喝采を浴びるのは畏れ多い偉い人や強い権力を持った人に対して勇気を持って苦言を呈した時であり、弱い立場の人間に向けたのであればただのいじめか無神経な言葉の暴力にすぎないように私には思えます。

私もかつて石原氏が視察したような患者さんの治療に携わった経験がありますが、この世に無駄に生きている人はいないし、一方的に受け身に回ってただ生かされているだけに見える患者さんでも、我々医療スタッフや家族達に実に多くの大きなメッセージを投げかけてくれ、感銘を受けたものです。
そしてその経験はその後の自分がライフワークとして取り組もうとしている事にとても大きな影響を与えたと思っています。

そのエピソードを一つ紹介すると、大学病院に、ウェルニッヒ・ホフマン病という神経が侵された難病で、20数年人工呼吸器で生き続けている人がいます。
はじめ彼を人工呼吸器をつけて治療し続けること自体が無駄な努力であり税金の無駄使い、という声がどこからともなく耳に入ってきました。
とてもくやしくて、夜眠れなかったことを思い出します。
しかし彼をよくよく観察するうちに体は全く動かせないのだけれど、喜怒哀楽や意思を目の動きだけで上手に表現します。
いろいろな工夫をしながら彼になんとか文字を学習させ、それを目で指し示す事によって彼はついに言葉で自分の意思を表現できるようになりました。
それだけではなく楽譜・音符も学習しついには作曲までして、今では曲の発表会も開けるようになっています。

もし我々が予断と偏見を抱いて彼に接していたならば、「心も人格もなく無駄にただ生かされているだけの社会のお荷物的存在」と決めつけ、肉体はもっと早く合法的に「安楽死」させていたことでしょうし、ましてや彼に「心や精神が存在している」ことに誰も気付かなかったことでしょう。

もし身内やご近所に精神や知能または肉体になんらかの障害のある人がいて、その人とある程度の関係が結べている人ならばきっと、石原都知事の発言は社会的に恵まれている強者の側の発想であり、障害者に対する無知から生じた軽薄かつデリカシーに欠けたものであることにすぐに気付くはずです。

そう考えると日本はもっともっとノーマライゼーションを進め、障害者との共生をはかりお互いの距離(心も体も)を縮められればいいなと思います。

それは障害者の幸せにつながるからではなく、自分達の幸せにつながる、実に大切な事と直感するからです。『情けは人のためならず!』


【結核】
今年、厚生省は「結核緊急事態宣言」なるものを発表しました。

結核はかつて「国民病」とまで言われた時代がありましたが、生活水準の向上や医学・医療の進歩によって克服されたかのように思われていました。しかし決して「過去の病気」ではありません。

平成5年にはWHO(世界保健機構)も世界各国に対し「非常事態宣言」を発表しており、結核対策の強化を呼びかけていました。

それにもかかわらず、日本においても平成9年度4万2千人の結核患者が発生しており、2千7百人もの人たちが死亡しています。
しかも、ここに来て2年連続して新規患者発生数、罹患率ともに急に増加に転じはじめているのです。
特に薬の効かない「多剤耐性結核の増加」、「学校・医療機関・老人関連施設での集団発生の増加」、そして「高齢者・在日外国人の患者増加」が問題として浮かび上がっています。

結核菌は患者さんの咳・くしゃみで空気中に放り出され、他人の肺の中に入り込み増殖を始めます。この時ツベリクリン反応検査をすると、その部分がとても大きく発赤やしこりを形成します。

しかしたいていの人は免疫の働きで体の中に菌を封じ込め発病しないで済みますが、一部の人は体力・免疫力の低下に伴い発病してしまうことがあるのです。

そうさせないためにツベリクリン反応が強陽性の人達は「抗結核剤の予防内服」をしてもらいます。
もし発病した場合、その症状は風邪と同じ咳や痰が長く続き、微熱が続きます。そのうちに怠さ・寝汗・胸の痛み、さらにひどくなると喀血したりします。喘息気味で咳が長引く場合との区別は難しいのですが、胸のレントゲンやツベリクリン反応、痰の培養・血液検査等で判断します。
心配な方はご相談下さい。

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