げんき便り 5月号「子宮頸癌ワクチンについて」

つい最近日本外来小児科学会の春季セミナーで、現在、実質ワクチン接種停止状態にある「子宮頚がんについての講演会」がありました。
子宮頚がんに罹ると日本では1年で3000名の若い女性が命を失い、1万名の方が子宮を切除しなければならなくなる恐ろしい癌です。世界では53万人が新規に発症し、27万人が命を落とすとされています。けれども今は子宮頚がんを予防するワクチンがあり、世界130カ国以上で使われており、近い将来子宮頚がんは過去の病気になるだろうといわれています。(子宮頚がんワクチンを開発したドイツ人医師ハラルド・ハウゼン教授はノーベル医学・生理学賞を2008年に受賞しています)そんな中2013年4月子宮頚がんワクチンは日本でも定期接種となりました。我が家の3人娘も早速3回ずつ計9回打ちました。しかし、それからわずか2カ月後の6月には、ワクチンを打った若い女性達たちから神経の異常を思わせる様々な症状が始まったとの訴えを受け、あっという間に「積極的ワクチンの接種勧奨の一時差し控え」を国は決定せざるを得なくなりました。

当初は身体表現性のものでワクチンとは関係のない症状の「紛れ込み」の可能性が高いと評価を下されていたのですが、連日テレビで「ワクチンのせいだ」として流される女の子の痙攣する姿や、車椅子に座る少女の姿が連日のように放映され続け、多くの国民、医療関係者に非常なショックを与えました。

更にこの問題をこじれさせたのは2014年に、わざわざ仮定の病名まで作って「薬害」を唱える医者達が登場した事です。「子宮頚がんワクチン関連神経免疫異常症候群(HANSハンス)」といいます。彼らは自己免疫の脳障害説の仮説の下、大量のステロイド点滴パルス療法、血漿交換療法、脊髄電気刺激療法、高齢者用の認知症治療薬内服などかなり高額で危険性のある、問題のある「実験的治療」を行っています。そして2016年には子宮頚がんによるとされる被害に対する「国家賠償請求訴訟」を起こしました。日本ではこの裁判が終わるまではゆうに10年を要するといわれ、それまでは「ワクチン接種再開はできない」だろうと言われています。その10年間の間は日本の小児科医はワクチンを打っ事ができず、日本の産婦人科医たちは3万人もの死と10万人もの女性の子宮を摘出し続けなければなりません。

そんな中2015年12月決定的なデーターが公表されました。名古屋市の河村市長が市内に住民票のある中学3年から大学3年生相当の若い女性7万人に対し子宮頚がんの接種群と非接種群における副反応の発生状況を調べたのです。この調査は非接種者よりも接種者の方が回答の意欲が高く接種群に発症率が高く出やすいバイアスが椎っていながら、結果は「ワクチンを打っている人のほうが打ってない人よりも、症状のある人の割合が少なかった」という中間報結果が得られました。この事は子宮頚がんワクチン薬害説をより強く否定する意床合いを持ちます。ワクチンを打ってない人のほうがより多く異常症状が出ている事になるのです。ある意味思春期の女性に起こりがちなヒステリーか何か精神神経症状の特徴的な表れなのでしょうか?

後に名古屋市の報告は裁判に不利な証拠とないかねないためデーターを載せるのみでコメントをすることを辞めて、最終報告を出しませんでした。こんな事で日本のワクチン行政は大丈夫でしょうか?なお春季セミナーの講演者である村中璃子氏は一ツ橋大学卒、北海道大学卒の一風代わった経歴のお医者さんです。科学誌「ネイチャー」が主催するジョン・マドックス賞を2017年11月30日に受賞しました。(この賞は、困難や敵意に逢いながらも、公共の利益のためサイエンスを世に広めた人物に与えられるものである)一刻も早く子宮頚がんワクチンを再開したいものです。