NO.109

平成13年7月1日発行

子どもの頃テレビの名司会者で高橋圭三という人がよく『真実は小説より奇なりと申しますが、世の中は…』とよく言っていたのを思い出します。
最近の世の中の驚くような事件の数々はまさに、「現実に起こる事件の方が架空の作り話以上に奇怪な内容になっているな」とつくづく思います。

つい先頃起きた大阪教育大付属池田小学校での殺傷事件もその一つと言えるでしょう。

昔は子どもの多くが栄養不足や病気のために、無事に成人まで育てるのが大変でしたが、今や事故や事件に巻き込まれずに無事に生きていけることがとても幸運に感じられる時代になってしまいました。
それにしても、今回の池田小学校の波紋は精神科デイケアをやっており、今後生活訓練施設の建設を計画している当クリニックとしては困ったことです。

「精神障害者はみんな何をするか分からなくて怖い」と世の中から単純に思われるのは心外です。
普段より粗暴で、周辺の人たちといつもトラブルを起こして、果ては数々の刑事事件でまで起こしている人たち(精神病患者の他暴走族や暴力団等)を放置していることや、精神障害者を装えば(あるいは未成年でさえあれば)、微罰から逃れることができるとして、法律が悪用されることをなんとか阻止しなければなりません。

もちろん精神障害者が犯罪・事件を起こすこともありますが、大部分の人はどこの医療機関にもきちんとかかっておらず、精神病院を退院後、つながりが切れて放置されたままのケースが多いようです。
精神障害者が社会で起こす犯罪発生率は、むしろ一般の人たちよりも低いという結果が出ているくらいなのです。

私たちがまずやらなければならないことは、一つは犯罪を繰り返す人に対してしっかりしたプログラムを作り、それに基づき施設で刑に服させると共に、更生させたりして再犯を阻止したりすること。
もう一つは、精神障害者に対しては、精神病院と社会の間に、スタッフが充実した多彩な用途の中間施設をもっと国や地方自治体が責任をもって作るべきだと思います。

今叫ばれている司法精神病院も一つの選択肢かもしれません。
この事件をきっかけにして、改革断行の小泉内閣が、今後どこまで本気でこれらの対策を実行していくか、熱く見守って行くことにしましょう。
亡くなった8人の小学生の死が無にならないように願って。