NO.113

平成13年11月1日発行

21世紀はひょんな事から、新しい形の戦争とテロの時代となりつつあるようで、困ったものですね。
航空機による超高層ビルへの自爆テロに続いて、炭そ病による郵便テロが相次いで世の中の不安を一層かきたてています。
それに加えて狂牛病の人への感染の不安、不況のより深刻化など重苦しい雰囲気に世界中が包まれてきています。
とりあえず、狂牛病については今月号の「病気の話」を参考にして気持ちを落ち着けて下さい。

今回は炭そ病について少し触れたいと思います。
最近外来で、足の傷がもとでその周辺が赤く腫れた患者さんが来られ、炭そ病ではないかと本気で心配されていましたが、無事3,4日で良くなりました。(丹毒だったのかもしれません)
でもそれくらい世の中に炭そ病というものが知れ渡った証拠だと思います。
炭そ菌は大気中で「芽胞」という安定した状態で浮遊したりして長期間存在しています。
主に「皮膚」と「腸」と「呼吸器」に感染し、95%は皮膚炭そが占めています。

今テロで問題になっているのは「呼吸器系の肺炭そ病」で、初めは風邪様の症状を呈し、その後呼吸困難によるチアノーゼ、昏睡、そしてショックによる急死に陥ります。

予防として、ヒト用のワクチンは日本では手に入りませんが、生物化学兵器の研究開発の進んだアメリカ・イギリス・中国・ロシアでは軍事用に持っています。
抗生物質のジプロフロサキシンやペニシリンでの大量内服でもある程度予防できるようです。

治療としては抗生物質のペニシリン、マクロライド、アミノグリコシド、キノロン、テトラサイクリン系等々いろいろ効きますが、敗血症になったり、呼吸器の炭そ病には適切な治療法がなく、致死率は95%にもなるそうです。

今はともかく、炭そ菌テロが日本にも波及しない事を願ってやみません。