No.132

平成15年8月1日発行

今年も子供たちにとって楽しみな夏休みがスタートしましたが、天候が肌寒く東北地方では早くも冷害の心配も囁かれています。

一方世情の方も6年前に神戸で酒鬼薔薇聖人と名乗る14歳の少年による猟奇的な殺人事件があり、世の中の親たちに衝撃が走りましたが、今回の長崎に於ける幼児(駿君)殺人事件が更に12歳の少年によるものであり、その手口の異常さや、彼がいわゆる非行少年でなく、切れやすく情緒がやや不安定ながらも学業の成績は優秀な生徒であった事に、幼い少年達の心の『闇』を読み切れない親たちとしては再び背筋の寒くなる思いです。

被害者及びそのご両親の無念さ、また加害者の親の心情そして、いつなんどき自分の子供たちが加害者にも被害者にも成りうるような今の日本の社会状況を考えると親として複雑な気持ちに襲われます。

加害少年をどう処遇していく事が被害者及び被害者遺族の無念な思いに応えたことになり、今後の事件の再発予防に繋がり、合わせて加害少年の真の反省と更生になるのだろうか、と考えるととても難しい問題です。

重罰化を更に進めるとか、年齢制限を更に下げたり、撤廃して事件の内容によってケースバイケースとする方法、更生保護施設・懲罰施設のないようの充実や更生監督・観察プログラムの充実と長期化、そして彼らが本当に心の底から反省し罪を償おうとしているかの『心の見極め』が大切になるでしょう。

過去の類似事件では少年犯罪に限らず大人の起こした犯罪でも、刑期中はもとより刑期終了後の言動が全く改まっておらず遺族達をさらに傷つけ苦しめるケースが余りに多すぎて、『殺され損』になっている事が多すぎると思われます。

今の日本がなぜこれほどまでに倫理道徳観や文化面が荒廃した危険な社会になってしまったのかそれを理由に私達大人は、日本の近代文明化・経済発展のこれまでのあり方を含めて、よく考え反省していかなければならないと思います。

まずは最低限自分の子供たちや孫たちとじっくり向き合い、しっかりと躾・模範を示し、親たちが子や孫たちに将来にわたって伝えていきたい『心・精神』を一生懸命ぶっつけ理解させて、足もとから変えていくべきだと思います。

私も外来の場でお子さん・お孫さんたちの言動でこれはよくないなと思った時は率直に当人や保護者の方々に厳しく注意をさせていただき、子供たちの躾のあり方・導き方を共に考えて行けないものかと考えているところです。

もちろん私も含めて大人たち自身のあり方を厳しく反省した上でですが…。

それにしても今年の夏休み、子供たちにはどうか無事件・無事故に過ごしてほしいものです。