NO.172 新年度から深刻、医師不足

4月の新年度から恐れていたある事が雪崩のごとく起こりそうです。
それは地方の病院の医師不足です。特に地方の基幹病院に顕著に見られるでしょうが、大都市及びその周辺の病院もその例外ではなさそうです。
この地域でも深谷のある基幹病院が4月より内科・消化器科6名、泌尿器科・産婦人科1名が補充できず、他に透析の習熟した医師2名欠員、小児救急や新生児・未熟児受け入れのための小児科医が足りず夜間時間外対応が火・木・金はできなくなると通知が来ました。
大学の医局の情報や友人・先輩医師の話からも東京都内の伝統ある有名病院ですら次々と大学からの医師派遣取りやめの話ばかり聞かれます。その原因は、主に国が新たに義務づけた新臨床研修医制度が失敗したことが大きいと思います。
研修医の大部分が大学での研修を選ばなかった結果、これまで大学医局が中心になって関連病院に交代で医師派遣していたものが、不可能になりました。
研修医も多くの診療科を経験した後自分の専門とする科を選べるようになり、目が肥えて、死ぬほど忙しい科や訴訟に遭いやすい科(産婦人科・小児科・麻酔科・救急救命など)を敬遠するようになってしまいました。
女性の医学部進学も目覚ましく、30年前には5%程に過ぎなかったものが今では45%近くになりました。
しかし結婚・出産・育児を抱えて働き続けることはかなり難しく、かなりの女医たちは家庭に収まってしまい、医師不足に拍車をかけていると思われます。
また、主だった基幹病院の医師は労働がきつく、当直明けでも連続通常勤務はあたりまえで、過労で亡くなったり自殺する医師が多く、勤務状態の改善が早急に必要とされます。そのためには更なる医師の補充が必要で、医師不足は深刻です。
さらに昨今のマスコミによる医療過誤に対するキャンペーン、警察・検察による福島県や奈良県での産婦人科医に対する結果責任を問うような起訴・逮捕など、医師としては職業的誇りや意欲を削がれることばかりが続いています。
多くの心ある医師たちがプロ意識や犠牲的精神を捨てて保身に走るような風潮がもしもこのまま進行すれば、日本の世界に誇れる医療制度もあっという間に崩壊しかねません。
国も国民も水や空気と同じように「いつでもどこでも誰もが均質で安く手に入る」と思っているこの医療制度を共に大切に守っていきたいものですね。
今後の国の動き、マスコミの姿勢、国民の世論に注目していきたいと思います。