NO.177 尿路結石に思う

先月号で犬と散歩を始めてからとても体調がよくなったと書いたが、「好事魔多し」の喩えのごとく健康を損ねてしまった。
久しぶりに尾瀬ヶ原ハイキングに出かけたのはよかったが、朝から3回ほど尿に血液か尿酸の結晶らしきものが混じり、痛くはないが尿の色が赤黒くなる。
そのうち透明に戻り安心していたところ、歩いているうちに右のわき腹から腰の後ろにかけて鈍痛が始まった。
マラソンの時に似た痛みで、そのうち治ったがしばらくするとまた痛み出し、帰りのバスの中でずっと腰やわき腹をさすったりたたいたりしていた。
夜になると更に痛くなり眠れず、痛み止めの薬を飲み、湿布を貼って寝た。翌日も同様だったが、愛犬との朝の散歩もいつもどおり行い、痛み止めを飲んでやり過ごしていた。
三日目も夜中の3時頃から痛み出し、次第に痛みが増強し薬も効かなくなり、これはさすがにおかしいと感じ、近くの総合病院を受診した。
たまには患者として逆の立場を味わうのも勉強になり、いい体験だと思っていたのだが、大変な思いをした。
受付では「泌尿器科を受診したい」といっても、「まずは内科か整形外科を受診しろ」と言って聞かない。結石が一番疑われるので泌尿器科がいいのではと言ったところ「十時半で受付は終了した」と言い始める始末。「先ほど11時半と言ったはず」と言うと「仕方ないなあ」という感じでようやく許可が出て、いざ外来へ。
駐車場も広いし、建物も立派できれいだし、検査もCTをはじめあらゆるものが揃っており、日曜祝日もやっており、お盆休みもなく1年中診療を行っていて便利この上ないし、有難いものである。
これでは確かに地域の商店街がさびれて巨大なスーパーが繁盛するように、一般開業医もさびれて大きな病院に患者が集中するのも無理のない事だと思う。
しかしそれからである、いくら時間が経っても誰一人呼ばれず2時間が経っても誰も文句を言う人もなく、看護師も何も事情を説明してくれない。
容態も気遣ってくれる様子もなく、益々増強する痛みに身もだえしながら吐き気をこらえて待つこと2時間半、ようやく呼ばれ、「あれ先生でしたか。言ってくださればもっと早く拝見したのに、失礼しました」と。
案の定、左右の腎結石と右尿管結石があり、右尿管の途中に石が引っかかり尿の流れを止め、右の腎臓が1.5倍に腫れ上がって機能が低下していた。
さっそく点滴を開始し、麻薬の痛み止めを入れてもらい痛みは治まり、石を溶かす薬と尿道を拡げる薬を飲んで1週間ほどで石は流れ落ちて治ったが、医療に何が一番大切かを思い知った。設備やシステムより応対する人の人間性が大事だと。