No.209 マザーテレサと宮城まり子

つい先日テレビで「マザー・テレサ」という映画を観ました。インドの貧民街で社会福祉活動を行いノーベル平和賞を受賞した女性の伝記映画です。
映画を観てそのひたむきさにとても感動したのはもちろんですが、なぜか日本の宮城まり子さんの姿と重なって仕方ありませんでした。
宮城まり子さんも若い頃「ガード下の靴磨き」という歌で一躍有名になりましたが、どういういきさつか分かりませんが突然肢体不自由の子供たちや親に恵まれない子供たちのために歌手を辞めて社会福祉活動に入っていかれた方です。
今から20年ほど前、クリニック開業前に患者さんたちと「ねむの木学園」へ見学に行ったことがあります。その時ある親が「ねむの木学園も内部は色々問題があるそうよ。私の知り合いもそこを辞めてしまってね。」と言いました。
私はすかさず「ところでその方は今どこでどんなことをなさっているのですか?」と聞いたところ黙ってしまいました。
「他人への批判をしたり待遇の不満を言うのはやさしい事だけれど、その人以上の生き方・実践を行うのは難しいことだ」と私は言いたかったのです。
その後障害児団体支援をめぐる内部のもめごとに悩まされていた私は、宮城まり子さんに手紙を書き「親権について」というテーマで講演の依頼をし、熊谷の八木橋デパートで開催したことがありました。
その頃宮城まり子さんはとてもお疲れの様子でしたが、「いずれ「ねむの木村」という地域に広がりをもった楽園を作りたい」と熱く語っていたのが印象的でした。
さっそくインターネットで検索して、つい3年ほど前に「ねむの木村」をついに実現させていたことを知り、このほど静岡県掛川市に行ってまいりました。
そこは田舎の片隅でひっそりとした佇まいですが、おとぎの国のようでもあり、42年間積み上げてきた「まりこワールド」の集大成と言えるものでした。
養護学校、成人のための施設、喫茶、美術館、ガラス工房、文学記念館などいろいろな施設が仲良く点在していました。
今度またクリニックの友の会親子、デイケアの職員・メンバーさん、障害リハビリを利用されている親子などみんなと一緒に訪れたいとしみじみ思いました。
最後に見学で心に残ったまり子さんの言葉—「誰も飼殺しにならないようにね」「いじめるのは淋しいからなの。自殺って、強がっているの。駄目よ」