NO.50

平成8年3月1日発行

今、血友病患者にエイズが広がった原因として、非加熱濃縮第8因子製剤が問題になっています。
その製剤からエイズ伝染の危険を知りながら、他の安全な加熱製剤に切り替えなかった厚生省の高級官僚たちと当時のエイズ研究班の高名な医師達。

非加熱製剤の危険性に目をつぶり、自分の患者に平気で投与し続け、他の医師たちにもその製剤を使い続けるよう指示していた無神経さには驚きと怒りを感じます。
これはもう立派な犯罪です。

しかも、彼らの医学的判断を曇らせた原因が、まだ加熱処理の技術を持たなかった日本の製薬会社の利益を守ってあげるためだったという事実を知るにつけ、改めて厚生省や地位の高い医師たちの癒着・腐敗ぶりにあきれ果ててしまいます。しかし、自分の足下に目を向けてみると決して他人事とは言い切れないことが多々あります。

「先生と言われるほどの馬鹿でなし」という川柳ではないが、いくら日頃先生と呼ばれて奉られても、実際やっていることはもしかして製薬会社の勧める製品を厚生省や偉いとされる教授達のお墨付きのもとで、疑う事なく安全で効く薬と信じて製薬会社の小売店とも言えるような診療所で患者さん達に実演販売しているだけなのかもしれないという気がしてしまいます。

医学生の頃取り組んだことのある「森永砒素ミルク事件」も結局赤ちゃんコンクールイベントを通じて森永と岡山大学小児科の医局に深いつながりができていたため、ある時点で奇病の赤ちゃんの共通点が森永の粉ミルクを皆飲んでいることに気付きながら、森永に気兼ねして数カ月もの間公表せずに、その間に更に多くの砒素ミルク中毒患者を出してしまった事と余りにも似ています。

人間借りを作ると言いたい事も自由に言えなくなり、とかく判断を誤りがちです。げんきクリニックもこれを機会に小さな歩みかもしれませんが、医療関係業者の人達との付き合い方、また関係業者や患者さんからのいただきものに関しても、厳しくしていこうと考えております。みなさまのご理解とご協力をお願い致します。