NO.54

平成8年7月1日発行

毎年6〜7月の頃は食中毒が一番起きやすい季節です。
しかし今年は、岡山・広島等全国で病原性大腸菌O-157による食中毒発生により多くの子供達が入院し、死亡者も何名か出たショックもあり、外来でのやりとりがいつもと様子が違ってきて患者さんたちの目が真剣そのものです。

吐き気、腹痛、下痢そして微熱で受診する人の大部分はウィルスによるもので、感冒性胃腸炎とかウィルス性胃腸炎と呼ばれ、せいぜい吐き気止めの座薬と絶食・食事療法でほとんど2〜3日で自然に治ってくれます。

少し体がきつそうだったり、便に血液が混じったりした場合は点滴したり、便培養の検査を提出したり、抗生物質を処方したりするわけですが、今度の大腸菌騒ぎでみなさんの目つきが変わり、あれこれ質問してくるのでいつもより便培養を提出する例がかなり増えました。

O-157はアメリカで1982年に初めて検出され、その時はハンバーガーが感染源だったそうです。(牛肉の挽肉にご用心!)
そして1990年に浦和の幼稚園で日本で初めて患者が268名も発生し、うち2名の子供が命を落としました。このときは井戸水が原因でした。

重症の人は昔の赤痢のようにものすごい血便が出たり、激しい腹痛・脱水などで一目見ただけでただならぬ病状であることが分かります。
これはよくある普通の食中毒と違ってかなり特別に強力な毒素のなせる仕業によるものです。
予防はもちろん飲み物、食べ物はよく熱を通すことと石けんでよく手を洗い流水で洗い流すこと、作った料理はすぐ食べることに尽きます。

くれぐれも冷蔵庫で保存しておけば安心だと過信しないで下さいね。
ともかくお腹の調子が悪くて不安を感じたら是非ご相談下さい。