NO.66

平成9年8月1日発行

夏休み真っ盛りですが、みなさんいかがお過ごしですか?

日本国中の「子を持つ親たち」を震撼させた神戸の殺人事件も、犯人が捕まりホッとひと安心と言いたいところですが、そうもいかないみたいです。この種の事件・犯罪は今後もますます増えていきそうに思えてなりません。でも言えることは、子供だけが変わってしまったのではないということです。
物質文明が発展していろいろと生活が便利になっていく反面、それらを使いこなす人間達の精神の力というか内面がついていけない事が問題のようです。

子供時代に思う存分(親の愛情をもらいながら)遊び尽くし、溢れ出る好奇心を教育の力によって満たし、伸ばしてもらいながら多くの常識と教養を身に付けていき、そしてやがて親離れの時期を迎えて一人前の成人となり、社会でそれぞれが活躍の場を見出していく。

そんな簡単そうに思えること一つ一つができなくなってしまっている悲しいこの日本の現実。
何よりも大人自身が物質至上主義・経済至上主義にどっぷりとつかり、感覚がマヒしていて、後に続く子供たちに模範を示せないでいます。
そしてこの誤りに対して一体どこから手をつけて、手直ししていったらよいのか分からなくなりそうに思えます。
それでも人間の中に潜んでいる「本能」が、案外うまく働いてくれるかもしれないと、私自身は密かに期待はしています。
「嫌だなあ、何か間違っているなあ」と感じたら反対の方向へ振り子を揺り戻そうとする力が自然と働き、いずれ新しい動きとなって始まるに違いないと思うからです。

行き詰まった時は「人間もふつうの動物・生き物のひとつである」という基本認識に戻り、土や水に親しんだり、川や海に遊び戯れ、森や林・山にわけ入り、火を起こし料理を自ら作り、犬・猫・山羊・牛・馬・豚その他の動物達とじかに触れ、かれらとの付き合い方やかれらの子育ての知恵を学び、音楽や歌・踊り・祭りをみんなで集団となって大騒ぎして楽しむ。
難しく考えなくてもこんなことは、夏休みになるとどこの家でもきっと似たような事をすでにやったり、これから計画したりしていることでしょう。

医療という狭い範囲でみても、上に挙げたようなことが、現代医学をもってしてもなかなか解決困難な病気の治療等に、取り入れられ成果をあげています。
小児科における子育てやしつけに関する事、老人のボケの予防・治療、精神病や心身症・不登校などの心の治療、各種障害に対するリハビリ治療などに自然を取り入れ、原始的・根源的ともいえるその癒しの神秘な力(本能)を引き出し、複雑で非人間的なものとの調和をとるわけです。

世の中全体がそのような動きにもっと目を向けて、調和のとれた文化・文明の発展が実現されていけばいいなと思います。