NO.72

平成10年03月1日発行

長野冬期オリンピックが数々の感動を残して、成功裏に幕を閉じました。
中でもとりわけ心に残ったのは、金メダルを取った何人かの選手が「亡き父親」への熱い思いを語ったことでした。
今の日本では昔と比べると父権や父性が弱まり、そのことが子育ての面でいろいろと支障をきたしてきているように思えてなりません。
そんな中でメダリストの父親達は息子や娘に、生きていく上での重要なメッセージを強烈に与えることに成功しているように思えます。

「赤ちゃんは何色にも染まらず真っ白で生まれてくる」とよく言われますが、私はそうは思いません。
必ず両親から受け継いだ遺伝子により、ある種の色を持って生まれてくると思います。
その遺伝情報は何百何千年も経て脈々と先祖から受け継がれてきた年代ものもあるかもしれませんし、つい最近両親が体験・学習して獲得して、体に記憶させたばかりのホヤホヤのものもあるかもしれません。
もちろん生まれ育った環境と教育・しつけの力も無視できません。
それとて「親の背中を見て子は育つ」と言われるように、あまり多くの言葉はいらないようです。

そんなことを考えていた矢先、かつてクリーンなイメージで人気の高かった国会議員が株をめぐる不正取引で逮捕寸前に自殺するという事件が起こりました。
品性に欠ける(?)上昇志向で人の上に立とう・支配欲を満たそうとでも思ったのか、東大-新日鉄-大蔵省-そして国会議員と上り詰め、おまけに朝鮮民族の誇りを捨てて日本人以上に日本人らしくなろうとし、いつしか手段であったはずのお金もうけが目的のようになってしまったのかなあ?などと感じてしまいました。

そして大金持ちらしき雰囲気を漂わせる両親が、「うちの子だけでなく、みんながやっていることなのに」と怒っている場面を見ると、本当にそのとおりかもしれないけれど、でも息子を諫めることもせず、そんなせりふで息子の弁護しかできない「この親にしてこの息子があったのだなあ」という気がしました。

オリンピックの金メダリストになるほどの影響を与えた親と、息子を可哀相な自殺せざるを得ない生き方へと導いてしまった親。
この違いはどこから生じるのだろうか?
そして人の持つ品性は果たして遺伝するのだろうか、教育・しつけで獲得されていくものなのだろうか?
みなさんはどう考えますか?