NO.83

平成11年3月1日発行

今年のインフルエンザの流行は例年に比べてかなり違ったものでした。

まず、昨年の12月は全くといっていいほどインフルエンザらしい患者さんをみかけませんでした。
そしていつもながらお正月休みには流行もひと段落して、再び1〜2週間後から患者さんが増え始めるのですが、今年はお正月明けから大人のインフルエンザと思われる人が次々に受診しました。
その後も働き盛りの大人を中心に少しづつ拡大し、2月中頃から下旬になってこども達へと流行が移っていきました。

この間マスコミがインフルエンザによると思われる脳炎や肺炎による全国の死亡者の詳細を連日報道し、インフルエンザの恐ろしさを全国民に知らしめました。
でも今年のインフルエンザが特別恐ろしいタイプという訳ではなく、毎年同じように多くのお年寄りやこども達が犠牲になっていたのです。

それから例年ならばインフルエンザのワクチン接種に対して効果に疑問をなげかけ、副作用による後遺症を強調しすぎる傾向の強かったマスコミが、一転して老人施設や精神病院に対して「ワクチン対策などの問題を怠っていた」と論調が変わるのを見て、なにか結果を見ての場当たり主義のような感じを受けました。

ただ病院では毎年体力のないお年寄りやハンディのある病気を持っている人、受験生、ならびにその家族の方々には11月頃にワクチン接種を受けるよう「げんき便り」で勧めると共に、私自身も実施してきました。

また嘱託医をしている老人ホームの入居者やスタッフ達にもここ2年ほど接種してきており、自分自身も含め今のところ発病者ならびに死亡者はゼロでかなりの効果を実感しています。

今年はマスコミの連日の報道後、かなりの老人施設等が急にワクチンを買い占めたためか、2月上旬に突然ワクチンが手に入らなくなりました。
来年はワクチンの増産体制を今一度整えてもらい、品薄にならないようにして欲しいとともに、皆様には是非11月か12月上旬のうちに接種するようにお奨めします。

また老人およびハンディのある人達についてはワクチン接種の負担金を安くするか無料にする制度を来年の冬までに作って欲しいものです。

それからA型インフルエンザに対し発病1〜日以内に服用すれば予防効果があるとされるアマンタジンという抗パーキンソン病薬の使用も、来年度はお年寄りを中心に希望する大人に限って考えていこうと思っています。

またA型インフルエンザウィルス感染を瞬時に判定できる検査キットが開発され今年実用化されたのですが、検査料が高いのと、やはり品薄で今年は手に入りませんでした。

こどもの診断は従来通り臨床症状でなるべく診断し、アマンタジンを服用する大人はこの検査で確認して本人の意思を聞いてから飲んでもらうようにしようと考えています。
このように考えてみると、マスコミの大騒ぎもある意味ではインフルエンザ対策の遅れや混乱を整理・改善するのに役立ったものと前向きに評価しようかなと思っています。