NO.92

平成11年12月1日発行

今年も残りわずかになってきました。
年々1年が短く感じられるようになったのは私が年を取ったせいなのでしょうか?
それとも世の中の動きが余りにめまぐるしく、せわしなくなってきたせいでしょうか?
ともあれ西暦2000年の記念すべき時が刻々と近付いています。

みなさんはその瞬間をどこでどのようにして迎えられるのでしょうか?
げんきクリニックのスタッフを代表して皆様に、よいお正月を!そして健康で『幸せな』年がまためぐって来ますように!お祈り申し上げます。

さてここで、『幸せ』ってなんだろうと考えてみました。
人間にはいろいろな欲望があり、それが原動力になって様々な活動に人を駆り立てます。
学生時代の精神科の授業で「精神分裂症の患者さんは、異性関係か・金銭関係か・プライドを傷つけられるかのどれかでバランスを崩して悪くなる。一般的に人間は色か金かプライドのどれかに弱い。」と言われ反発したのを思い出します。

今にして思えば、そこまで単純化できないまでも人間の追い求める『幸せ』の実現の重要な要素であると認めざるを得ません。

このことで感心するのは、今から250年前にドイツで生まれた「ゲーテ」と言う詩人がまさにこのテーマに取り組み、「ファウスト」という戯曲を24才から書き始め82才で書き終えるほどの難問だということです。

内容は、ファウストという人がまずあらゆる学問(哲学、法学、医学、天文学、神学等々)を通じて宇宙を支配する原理を究めようとしたが、知識の限界・無力さに失望する。
そこへ悪魔が現れファウストの夢をなんでも叶えて上げる代わりに、満足したら命をもらい死後は自分の召使いとなってなんでもいうことを聞けと持ちかける。

それに応じたファウストはありとあらゆる人間の官能的欲望を次々と体験していくことになるが、それらは彼を心から『幸せ』にはしてくれない。

次に彼は「美」を追求し女神ヘレーナを冥界から地上に連れ戻し結婚することにも成功する。しかし「美」すら彼の魂を救うことはできなかった。

深い山奥の自然の中に逃避したりもした。
そして100才近くになり盲目になったファウストは、最後に大事なことに気が付き、人生の意義をみつけ「時間よとどまれ。お前はいかにも美しい。」と。さけぶ。

いったいファウスト=(ゲーテ)は何を見出して『幸せ』を手に入れたのか?
賭けに勝った悪魔はどうなり、負けたファウストはどうなったのか?

答えは秘密。

『幸せ』の意味を問い、これからの人生がおまけと言えるためにも、じっくり読んでみる価値がありそうですよ。
文語体でなく口語体の訳本が最近いくつか出版されました。