アトピー性皮膚炎について

◇アレルギーのマーチ
アトピーとは、「奇妙な」といった意味で、家系的な要因に基ずくアレルギーで、従来の分類に入れられないものを、1923年コカという人が名ずけたもの。
その名のとおりアトピー性皮膚炎は、かなり発達した現代医学をもってしても原因・病態・治療に関して解明されていない部分が多く、そのため何かと議論の的になっている。
このアトピー体質は親から子へ、子供から孫へとかなりの頻度で遺伝する。但しその現れ方は人により強い弱いの程度の差がみられる。現れる場所も皮膚だけに限らず、消化器・呼吸器・目・鼻・耳とあらゆる臓器・器官に、しかも年齢とともに出たり消えたりしながら蕁麻疹や下痢・嘔吐・喘息発作、アレルギー性の結膜炎そして添出性中耳炎まで引き起こす。これら一連の現象はアレルギーのマーチ(行進)と呼ばれている。
◇症状と治療
乳児では顔・首・胸・お腹・背中に様々な形をした赤い発疹ができ、耳たぶの付け根がきれてジクジクなりやすいのが特徴。
乳児になる、肘や膝の内側・裏側を中心に顔や項部が痒くなる。かきむしるためもあってガザガザになり、かさぶたを形成し、体全体もザラザラのいわゆる鮫肌になる。
成人までその状態が続くとさらに皮膚の乾燥・硬化が進み、黒ずんだ色の皮膚になってしまう。季節的には乾燥する冬に悪化する傾向がある。一般的には年をとるにつれて軽くなっていく人が多い。
アレルギーの原因物質(アレルゲン)を調べる検査はいろいろあるが、検査してもアレルゲンを特定できないことが案外多い。もし検査で特定のアレルゲンが分かった場合、可能であれば無理のない範囲で生活の場から取り除こう。
例えば家のほこり・ダニ・カビの類がアレルゲンなら、よく掃除し、カーペットを使わないようにする。
食べ物が疑わしい場合は症状が激しい場合に限って、普段の食事からその食品を除こう。
米アレルギーの場合は稗・粟などの雑穀を食べるというように、代替え食品を食べる「食餌療法」をすることもある。この治療法はブームに一時なったが、1日も休まず行わなければならないし、栄養状態にも直接かかわるので、成長期のこどもたちの場合安易に採用すべきではない。
むしろ皮膚の手入れを丹念にしてあげよう。それだけで、たいていのアトピー性皮膚炎は軽くなるはずである。例えば爪をこまめに切るとか、石鹸で毎日汗や汚れを落とし、細菌が掻き傷につかないように努めよう。
アトピーの人は特に「とびひ(伝染性膿か疹)」や「水いぼ(伝染性軟属腫)」になりやすいので清潔に心がけよう。眠っている間に無意識にかきむしらないよう、かゆみ止めとして抗ヒスタミン剤を飲んだり、手袋を使ったり包帯をする事もある。
これらのことをしたうえで、必要ならばステロイドホルモン剤を含んだ塗り薬を使い、症状にあわあえて強いものから弱いものへと切り替えていこう。
また強作用が気になる余り中途半端で自分勝手な使い方をダラダラと続けないようにしたい。
症状が軽くなってきたら、入浴後のまだ皮膚が潤っている間に、よく精製された皮膚用の油(ツバキやオリーブ油、ベビーオイルなど)を塗って潤いを保ち、薬以外でなるべく良い状態を維持しよう。アレルゲンと思われる物質のエキスを薄めて皮下注射し、体を慣らして徐々にアレルギー反応をにぶくさせる治療法(減感作療法)も時には有効である。
最近では抗アレルギー薬と称される飲み薬が次々と開発され、減感作療法にとって替わりつつある。これはアレルゲンが不明な場合に対応できる点が優れている。
ともかく決定的な治療法がないだけに、信頼できる医療機関ときちんと決めて、その人に合った治療法を選んでくれるように相談し、上手に病気とつきあうことが大切である。