百日咳について

百日咳とはグラム陰性桿菌という細菌である「百日咳菌」によって引き起こされる急性の気道感染です。
その名前のとおり百日近い長期間厳しい咳が続くのが特徴で、菌によって産生された百日咳毒素が上気道の上皮細胞を刺激するために起こります。
明け方近くに顔を真っ赤に充血させて、コンコンコンと息を吐きながら咳き込んだ後にヒーイーと笛を吹いたような「レプリーゼ発作」と呼ばれる音が吸気時に聞かれるのが特徴です。
血液検査では白血球数が2万以上近くに増加し、リンパ球の割合が激増する特異的な検査値を示すので比較的早く診断がつきます。
1947年の我が国の統計ではおよそ15万人が罹患し、死亡者は1万7千人もいたそうです。
その後ジフテリア・破傷風とともに百日咳のワクチンを含む3種混合ワクチンの接種がすすみ、患者数が激減してきました。
ところが近年再び日本を含めアメリカ・カナダ・フランス・オーストラリアなどの国々で百日咳の患者さんが増えてきています。
昔は乳幼児に多いのが特徴的でしたが、最近では思春期・成人の患者が多くなる傾向がみられます。なぜなら百日咳菌が蔓延していた昔の時代なら予防接種も繰り返し最近の刺激を受けるためなかなか免疫抗体が下がりませんでしたが、百日咳菌が激減して菌に接触する機会が減ると、抗体は10年ほどで下がってしまって効果が無くなってしまいます。それで成人の患者さんが増えてきたようです。
しかも以前のように典型的な症状や検査データでない患者さんが増えた結果、発見や治療が遅れて余計に蔓延してきたようです。
治療にはエリスロマイシンやクラリスロマイシンといったマクロライド系の抗生物質が使われます。
また予防には予防接種が有効ですが、定期の接種の他に20歳過ぎに更に追加接種することが今後求められるようになりそうです。