糖尿病のインスリン注射による最新の治療

糖尿病とは、体の血液中のブドウ糖の量(血糖値)が、インスリンというすい臓から分泌されるホルモンの作用不足・分泌不足のために普通より高くなっている状態です。
尿に糖が出るのは、血糖値がおよそ170mg/dl以上と高い状態にあることを意味しています。食事前の血糖値が126mg/dl以上、あるいは食後の血糖値が200mg/dlあれば糖尿病である可能性が大きいといえます。
初期はほとんど自覚症状がありませんが、のどが乾く・よく水を飲む・何度もトイレに行くという症状が現れ、体重も次第に減ってきて疲れやすくなります。
治療が遅れたり、うまくコントロールできないでいると、手や足にしびれがおきる神経障害、尿に蛋白が出て最後には透析が必要となる腎症、眼底に出血を起こしやがては失明にいたる網膜症などの合併症が起こってしまいます。
かなりの高血糖が急速に起こると意識を失う糖尿病性昏睡を起こし、高度の脱水で死亡することもあり怖い病気です。
大部分の患者さんは体質や日常の食事の摂りすぎや運動不足などの生活習慣によって起こる2型糖尿病で、経口糖尿病治療薬(スルホニル尿素剤、ビグアナイト剤、αーグルコシダーゼ阻害剤、インスリン抵抗改善剤、速効型インスリン分泌促進剤など)の内服治療から始めます。
ほとんどの患者さんは内服治療と食事・運動療法でなんとかなるのですが10年以上にわたって内服治療していると50%ぐらいの確率で薬が効かなくなってしまう場合があり、その事を2次無効といいます。
薬でいくらすい臓を刺激してもインスリンが枯れ果ててしまった状態で、そうなる前になるべく早くインスリン注射による治療が必要になります。
治療がうまくいくと注射の必要がなくなり、再び内服治療だけでよくなる患者さんもいます。インスリン注射の治療ということになると、今までは病院に2~4週間ほど入院してもらい、1日に何度も空腹時と食後2時間の血糖値を測りながら一日1~2回食事の30分前に注射するインスリンの量を決めていきます。
働いている患者さんにとって一ヶ月近く仕事を休むのは容易なことではありませんね。でもご安心ください。インスリン注射による最新の治療では、外来に通いながらでも安心してインスリン注射の量を調節していけるようになったのです。
超速効型といわれるインスリン注射が開発され、食事を食べる直前に1日3回、薄い服ならアルコール消毒なしで服の上からお腹にポンと決められた量のインスリンを打てばいいのです。しかも注射針は針先が劣化して刺したとき痛みを強く感じるまでは何十回でも交換せずに使ってもかまいません。
血糖値のコントロールを知るために、時々食前食後の1日6回2日間だけ血糖を自分で測ってもらいますが、以前のように指先ではなく腕に器械を当て、操作も簡単で、ボタンを1回押すだけで20秒~30秒ほどで数値が分かります。
おかげで針を指先に刺す恐怖もなく、指先を使うデリケートな仕事、水仕事にも困らなくなりました。
当院では外来でのインスリン注射治療に力を入れて、合併症の予防に努めたいと思います。